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福岡高等裁判所 昭和39年(ネ)521号 判決

控訴人 南部文義

被控訴人 野田伴一郎

右訴訟代理人弁護士 井上秀助

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

≪省略≫

理由

被控訴人が福岡地方裁判所八女支部昭和三四年(ケ)第五四号不動産任意競売事件により、昭和三五年五月二七日本件不動産につき同裁判所の競落許可決定を得たところ右決定は即時抗告なく確定し、被控訴人は右競落代金を支払つて本件不動産の所有権を取得しなお右不動産競売手続は同年七月一五日配当終了により完結したこと、然るに、被控訴人においてその後前記裁判所より控訴人に対する本件不動産の引渡命令を取得するや、控訴人は昭和三七年三月一日右引渡命令に対し控訴人主張の如き事由(談合による競落)で同裁判所に執行方法に関する異議を申立て、同裁判所は昭和三八年二月二八日控訴人の右申立を認容して、前記引渡命令を取消したうえ職権を以て前記競落許可決定を取消す旨の決定をなし、右取消決定は不服の申立なしに確定したことはいずれも当事者間に争がない。

控訴人は右競落許可決定の取消決定により被控訴人は所有権を喪失したと主張するのでその当否について検討するのに、被控訴人が競落許可確定後競落代金を支払つて本件不動産の所有権を取得し、右不動産競売手続は昭和三五年七月一五日配当終了により完結したことは前記のとおりであるから、競落人たる被控訴人は、競売の基本たる債権又は抵当権の無効なる場合は格別然らざる限り(本件にありて前記取消決定が競買人の談合を理由とするものであることは前説示のとおりである)有効に競落不動産の所有権を取得したと解すべきことは当然であり、従つて競売手続終了後は手続上の事由により競落許可決定を取消すもその効なきものというべく、訴訟法上準再審によるならば格別、それ以外の方法では、最早やこれが取消をなし得ず、たとえこれを取消したとしても競落人において競落不動産の所有権を取得した効果に何等の影響を及ぼさないと解するのが相当である。してみれば前記取消決定により被控訴人がその所有権を喪失する理由はなく、この点に関する控訴人の主張は失当でこれを採用することができない。

よつて所有権に基いて本件不動産の引渡を求める被控訴人の本訴請求は理由があるからこれを認容すべく、これと同旨の原判決は相当で本件控訴は理由がないから棄却することとし訴訟費用につき民事訴訟法第八九条第九五条本文を適用し、仮執行宣言は不相当と認めてこれを附せず、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 高次三吉 裁判官 木本楢雄 松田冨士也)

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